ローカル・ガストロノミー

ローカル・ガストロノミー認証とは

ローカル・ガストロノミー認証

地域の風土、歴史、文化を料理に表現する「ローカル・ガストロノミー」。この理念を体現している飲食店や宿泊施設、加工品を認証する制度、それが「ローカル・ガストロノミー認証」です。

認証は一つ星から五つ星まで

料理に対する熱意や独創性、レストランが取り組むサスティナブルな活動はもちろんのこと、地域の風土・歴史・文化をどのように料理に表現しているか、さらに農産物や調味料まで含めて地元産品の使用割合、生産者と一体化した取り組み(たとえば契約栽培を推進して生産者の収入を安定させるなど)、地域への貢献度などを総合して認証を行なっています。

ローカル・ガストロノミーが目指すのは、作り手と食べ手を繋いで大きな輪を作ること。地域、そして広域での情報共有を促すために、認証店を対象にした勉強会や交流イベントなども開催しています。各地の気候風土にあった食文化を守り、発展させ、次世代に繋いでいくためにも、ぜひともご参加ください。

代表理事挨拶

ローカル・ガストロノミー認証の前身、「雪国A級グルメ」

ローカル・ガストロノミー認証制度の前身は、新潟・群馬・長野にまたがる7市町村の有志が集う雪国観光圏で2010年に始まった「雪国A級グルメ」プロジェクトです。A級といっても、けっして高級食材を指すわけではありません。「A級グルメ」とは「永久に守りたい味」のこと。「気候風土にあった昔からの食が失われつつある中、その食文化を守り、次世代に残していこう」という雑誌「自遊人」の呼びかけに、雪国の旅館、飲食店、加工食品業者の有志が応えて始まったプロジェクトです。

雪国観光圏は言わずとしれた南魚沼産コシヒカリの産地であるだけでなく、日本酒、味噌や漬物などの発酵食、保存食など、貴重な食文化が色濃く残っています。さらに多くの在来種、固定種と言われる野菜が生活に密着して地域に根付いているのです。これらの食文化を守るのと同時に、観光資源化することができれば、地域再生の鍵になる可能性が高いはず。それが「雪国A級グルメ」の起点でした。

やがて「A級グルメ」という考え方は、島根県邑南町にも伝播。2011年から邑南町は「A級グルメのまち」を掲げ、2018年には全国5市町による「A級グルメのまち」連合も発足しています。

かけ声だけの〝地産地消〟から脱却しよう

現在、旅行の目的を問うアンケート調査を実施すると、ほぼ「食べ物」が1位になります。そのせいもあってか、観光地では地産地消のかけ声が以前に増して盛んになってきています。しかし実際には表面的であることが多く、旅館の食材はもちろん、土産物屋に並ぶ商品の原材料が外国産であることは珍しくありません。たとえば、山菜蕎麦に乗っている山菜は中国産であることも多く、また漬物の原材料も外国産であることが多いのです。

「食の産地表記や原材料表記が年々厳しくなっていく昨今において、地域で提供する食べ物はできるだけ地域でとれた本物を提供していくべき」。
これが「雪国A級グルメ」認証の根底を流れる考え方です。そしてローカル・ガストロノミー認証でもその考え方を引き継いでいます。もちろん地域で採れない(獲れない)味を地域外、時に海外から取り寄せることを否定しているわけではありません。しかし同様の味があるならば、フードマイレージの観点からもわざわざ遠くから取り寄せる必要はありません。名産地と比べて少々劣っていたとしても、それを美味しく料理するのが料理人の腕とも言えます。

そもそもシェフや料理人で、素材の産地に関心を持っている人は未だ少数派です。「〇〇産」とメニューにあっても、それは八百屋や魚屋の「納品伝票に書いてあったから」で、自分の意思で選んだのではないケースも多々あります。もちろん「業者を信用している」という向きもあるでしょうが、極上の美味しさだけを提供する時代が過ぎつつある今、もう少し産地のことについて目を向けてもいいのではないでしょうか。

真の農商工連携を目指そう

観光の鍵が〝地域の食文化〟になり、シェフが産地の事情に興味を持つようになれば、おのずと生産者の意識と技術は向上し、単価も向上し、同時に生活も潤います。地域食材の「ブランド化」とは、このような背景から生まれるのが自然なのではないでしょうか。さらに、観光と第一次産業、レストランと第一次産業が連携するだけではなく、地域の加工業者にも新たなビジネスチャンスが生まれ、それにより真の農商工連携、域内6次産業化が生まれます。

ローカル・ガストロノミーの輪が広がれば、第一次産品の価格は上がり、生産者にとっては大きな恩恵になります。そしてレストランのシェフや観光事業者にとっても、より良い品質が入手できるようになればちょっとくらい値上がりしても全く問題がありません。さらにサスティナブルな環境と循環が生まれれば、地球上に生きる全ての人々にとってメリットがあります。つまり、三方すべて良しとなるわけで、それが地域を〝永久〟に持続させていく重要な鍵になるのです。

「食べる」ことは生きる基本。シェフがもっと地域の食材に興味を持てば、地域経済が変わります。人口減少問題にも新しい視点が生まれるかもしれません。
地域の風土や文化、歴史を学べば、料理にも奥行きが生まれます。食べた人は右脳だけでなく、左脳でも深く感じ、感動はより大きくなります。そしてその時、料理は生命活動を維持するための食事から、クリエイティブで感動を呼ぶ作品を通り越して、人々を動かす「メディア」になります。

ローカル・ガストロノミーが目指すのは、「心が豊かになる料理」、そして「心が豊かになる社会」。料理を作るという行為は全く変わらないのですから、せっかくならば、作り手と食べ手を繋いで大きな輪を作ることを意識したい。そんなレストランや観光事業者、加工食品事業者が集うのが、ローカル・ガストロノミー協会です。ぜひみなさま、ご参加ください。

一般社団法人 ローカル・ガストロノミー協会
代表理事 岩佐十良